人が行動を起こす時のスイッチになるのは何だろうか?
ということを最近よく考えている。
社会をより良い方向に変えて行くには多くの人が行動を起こす必要がある。
その行動を起こすきっかけになるのは一体なんだろう?
ということを話し合っていた時にある人に勧めてもらったのが『Start with Why』. Whyから始めよ、という本。著者いわく、人が行動を起こす時のスイッチはモチベーションではなく、インスピレーションらしい。
人の行動を促そうとコミュニケーションを取る時、私たちはどうも「何を=what」と「どうやって=how」を説明したがる。が、実際に人の意思決定を促し行動を起こすのは「なぜ=why」のところだという。
なぜ、何のために?それは人や組織の価値観やビジョンそのものに触れる。
頻繁に取り上げられるのはAppleの例。Appleの製品が消費者から絶大な支持を得ている理由はipodというもの=whatの品質が素晴らしいこと、その作り方=howがとってもシンプルで美しい、ということにはない。実はAppleが提示している世界観「既存の価値観を覆し、常に今までと違った視点で考えること」に消費者が「インスパイア」されている、という。
消費者は製品そのものの品質を他と比較して優れているから買うのではなく、Appleという会社やブランドに共感したり憧れたりなんとなく惹かれている。結果的にその人たちはAppleが作ったものなら何でも買いたくなっちゃう。Appleは既にコンピューターのメーカーではなく、「既存の価値観を覆す」ことを標榜した一つのソーシャルムーブメントであり、消費者がその大きな流れの一部になりたいと願うのだ、と。
安くて新しい機能があるから買う、という「モチベーション」のレベルではなく、言語化出来ないような「インスピレーション」のレベルに人の行動を促すヒントがあるということらしい。
だから、自分たちのやりたいことを誰かに説明するときにはwhyから始めなければならない。なぜそれを私たちがやるのか?
どんな世界を思い描き、目指しているのか。
ここに共感してもらった瞬間にそこに行きつく為に「何を」「どうやって」やるか、というところは自然と付いてくる。
企業と一緒にCSRのプロジェクトを立ち上げる時、企業にとってのメリットは何か?ということを考えがち。
マーケティング効果がある、新規ビジネスの立ち上げに繋がる、より企業の特性が活かせるプログラムになる・・・
こういう「インセンティブ」では1度は事業を一緒に出来たとしても長期的に付き合っていくのは難しい。
目指すべき未来社会の姿を共有できれば、そのビジョンの元に長期にわたってあらゆるアプローチを検討できる。
ビジョンが企業自身の掲げるビジョンとシンクロすれば経営戦略の軸に社会イノベーションを織り込むことだって。
Whyから始めることは他人の行動を促す為のルールに見えて実はインナーコミュニケーションとしてもとても大事。
私は何をやりたいか?ということは結構自分に問うものだけど、なぜそれをやりたいか?を問うことは少ない。
何のために生きていくんだっけ?というところが明確になっているときっとそこを目指す為の道の険しさや日々のむなしさなんかが平気になる。愛おしくさえなったり。
企業の行動変容を促す、という大きすぎる目標を掲げているのが今の仕事。企業だって個人の集まりで、日々多様な人と出会いながら一緒に行動を起こしてもらえないか、ということを押したり引いたりしているわけです。
もっと私たちの、私自身のwhyをクリアにして、世界観を共有して、まずは小さな傾きを作っていきたい。
いつかその小さな傾きが大きく流れを変える。
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