旅の途中



BOP幻想??


BOP層は消費者ではなく生産者として捉えるべき、というBOPビジネス批判の代表例として良く取り上げられているKarnaniの論文「Mirage at the Bottom of the Pyramid」を遅ればせながら読んだのでまとめと雑感。


・BOP層の定義が不明確、且つその規模が誇張されている。
Prahaladは1日2ドル以下で生活するBOP層が世界に40億人存在すると主張するが、世銀等他の調査によれば実際は多く見積もっても27億人程度、との主張。そうなると$13兆と見積もっているBOP市場は実はその10分の1程度の規模しかないことになり、ビジネスセクターに過剰な期待を与えている。

・最も貧しい人にはアクセスしていない
最も良く批判される点だと思うが、BOPビジネスとして紹介されているものは実は貧困ライン以下で生活している人には高すぎて手が届かないケースが多い。

・多国籍企業の役割が強調されているわりに、成功例が少ない
BOP層向け商品の開発には徹底したコスト削減が必要、且つ労働集約的になりがちなので大規模な多国籍企業には本質的に不向き。特に株主利益を常に念頭に置かなければならない上場企業は利益率の下がる可能性のあるBOPマーケット参入はハードルが高い。

・BOPを消費者として見ている限りは貧困は解決しない
所得の向上が貧困解決の最も重要な要素。BOP層を消費者としてではなく、生産者とみなすべきである。


なかでも最も考えさせられたのが以下2点。

・BOP層に教育や健康より嗜好品にお金を使うインセンティブを与えている
TVやコカコーラやビールの販売促進は本当にBOP層にとって望ましいのか?これは倫理的、社会的責任が伴うデリケートなトピックだと思う。贅沢品を売るべきではない、という態度は先進国の人々の傲慢、余計なおせっかい、という意見もある。他方で先進国でも販売規制の対象となっているアルコールの販売は法制の整っていない途上国で多国籍企業が無制限に販売をするのは如何なものか、というのは説得力のあるところ。

開発にはこの手のジレンマが常につきまとうような気がする。例えば地域の人々に意思決定を委ねる参加型開発手法は女性のエンパワーメントを促進するとして評価されているが、あるケースでは村の女性たち自ら伝統的に女性の仕事とされている手工芸のサポートを要請した。現場の実務者は彼女たちの意思決定の尊重を建前としつつ、男女間の役割分化を助長してしまうような結論にどう対処して良いかジレンマに陥ったとか。これは本当に難しい問題だと思う。男女間の平等という価値自体が西洋的な社会・歴史背景に基づいている部分が多いし、地域固有の伝統や文化と衝突する際に、アウトサイダーである開発実務者はいったいどう行動するべきなのか?

だれが意思決定すべきか?は結論の正しさだけではなく、決断を下す正当性の問題でもある。TVなんか買うお金があったら子供の教育に使いなさい、なんて言う権利が私にあるだろうか?Prahaladの言うそういった態度は'arrogant and patronizing'というのは一理ある。一体誰が最も正しい判断が出来るのか?そうする権利があるのか?

・小袋戦略はUnit Priceを上昇させている→政府の機能が軽視され過ぎている
典型的な一回使い切りタイプの小分け商品は確かに小売価格は安いが単価はむしろ通常の商品と同じか高いケースが多い。つまりBOP層は豊かな人より高いコストを負担している。さらに一回使い切りだと量の調整が難しく無駄が多い、ゴミの増加による環境面への影響も批判されている。

実は単価が高い、というのは最もなのだが、それでも全く買えないよりマシ、という反論もあるだろう。例えば電線の届いてない地域にソーラーパネルを持ち込み、安価で電気を配給しようというビジネスが増えている。電力の供給は素晴らしいが、実際には貧しい村の人々は政府が電気を供給している都会の豊かな住民より高い電気代を負担することになる。本当にこれでいいのだろうか?もちろん良くない。が、かといって全く目途の立たない電線の建設を待ち続けるよりはマシ、better than nothingというのも説得力がある。実際にはどちらが良いか、という問題ではなく、いかにこういった企業とパブリックセクターを協働させて長期的に地域間の格差が無い状況に持っていくか、が現実的に必要なアプローチなのだろう。

KarnaniもBOPビジネスにおける政府の役割の軽視を痛烈に批判している。
'By emphatically focusing on the private sector, the BOP propositions detracts from the imperative to correct failure of the government to fulfill its traditional and accepted functions such as public safety, basic education, public health, and infra-structure.' 企業やNGOは政府に取って替われるわけでも、そうするべきでも無い。
現実には、従来政府の機能とされてきたサービスにもどんどん企業が進出している。開発の民営化、と批判されているこの状況が今後どうなっていくのか?どうなっていくべきなのか?新学期の課題。まだまだ山のような読むべし論文リスト・・・
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by nanacorico0706 | 2010-01-16 11:17 | 勉強
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2年間の米国留学生活をゆるゆると綴ります・・・
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