旅の途中



カテゴリ:勉強( 20 )


頑張れ政府!


2月27日、28日とハーバード大学主催のSocial Enterprise Conferenceに参加。その後このカンファレンスに参加する為に日本から来ていたツアーの方々と合流してNYでも色々と先進的な企業やNGOを訪ねる。
たっくさん刺激を受けて本当に収穫大のイベントでした。

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マーケットベースのアプローチは最も貧しい人には届かない。とすれば、BOPビジネスは本来政府が提供するべきと考えられてきたマーケット外での機能を軽視し、ますます途上国の政府を弱体化させるのではないか。BOP万能論、マーケット至上主義は危険、という問題意識を持っていて、ここんところを色々な人にぶつけてみたい、と鼻息荒く参戦。

が、いや皆さん潔くもう気持ち良いぐらいに「ビジネスは本当に貧しい人には届きません。政府に頑張ってもらわないとダメなんです」と仰っていました。はい。そう思います。BOPビジネス万歳!みたいな人は皆無。大変失礼を致しました。鼻息沈着。

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*マイクロファイナンス機関への投資会社Developing World Marketsの幹部の方

「マイクロファイナンスはBOPの最底辺の人々には届きません」と断言。経済活動に参加する以前の基本的ニーズが満たされていない人にとってはマイクロファイナンスは貧困削減のツールとならない。基本的なインフラや公共サービスの提供においては政府の機能は引続きとても重要。

*革新的な技術でBOP層への水供給をしているWater Health InternationalのPresident

先進国に見られるような大規模な水供給インフラの整備は今の途上国ではほぼ不可能に近い。理由は1、そもそも国民全体に行きわたるだけの水資源の確保が非常に難しくなっている。2、政府にお金が無い。となるとコミュニティごとに小規模な浄水施設を作る同社のやり方が今後期待されるシステムだと。
現状、住人の多いコミュニティでは政府や国際機関の援助資金なしに有料モデルできちんと事業として成り立っている(利益が出ている)とのこと。一方で小さなコミュニティでは規模の経済が働かないため、外部からの援助資金をミックスしている。「Pure privateもPure publicも存在しない。ミックスが重要」と。
ビジネスでは水が供給出来ない農村部の小さなコミュニティに関しては政府に協力も呼び掛けているそう。また、水供給は公共性の高いビジネスなので水の安全性など、積極的に規制すべき、とも政府に働きかけているとのこと。あっぱれ。

*病院の不足しているインド郊外にクリニックを広めているVaatsalyaの創設者

人口の70%が農村地域に住むにも拘わらず病院の80%は都市部に集中しているというギャップを埋めるために都市部の4分の一の価格で医療を提供する営利のクリニック。現状カバー出来ている顧客は一日3~7ドル程度の収入で暮らす人々。一日1~2ドルと言われる貧困ライン以下の人たちはまだ手が届かない価格帯ということ。ビジネスとして持続させるためには現状これがコストぎりぎりの価格。BOP層にサービスを提供するのは今のところ非常に難しい、と。自分たちに全て出来るとは考えていない、無料のクリニックも有料のクリニックも両方必要、と。

その他あちこちのパネルやセッションで政府めちゃくちゃ重要、と力説する社会企業家やBOPビジネス推進者。先日はAcumen Fundインターンの電話インタビューでも「質問ある?」と言われて「この価格だとBOP層は払えないですよね?」と聞くと「その通り。政府に働きかけて色々工夫しようとしてます」と。

頑張れ政府!使い古されたPublic Private Partnershipを超えた新しい協働が必要とされているのだと思う。BOPビジネスが政府を弱体化させるのではなく、政府を巻き込み、働きかけ、補完しあう方向性がある。

繰り返しになっちゃうけどprivate/publicという区分自体がもう有効じゃないのかもしれない。社会的利益の極大化に目標を定めると、そもそも誰がやるかは関係ない。社会的利益が最大になるやり方でそれを出来る全てのアクターが参加すべし、というのが共通認識になっていく。

もちろんこれは理想形。そして今回の参加企業はこの分野で最も先進的な取り組みをしている会社だろうから、現実そんなに美しくはないだろう。上場多国籍企業、みたいな大会社はいなかったし。「社会的利益」を定義づけるのは誰か?という問題もある。利益を確保しないと死んじゃうというビジネスの厳しさは時に企業の視野を狭めるもの。でもだからこそ今回お会いした企業の経営者の方々、すごいなぁ。

少し視界が開けてきた1週間でした。
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by nanacorico0706 | 2010-03-11 13:19 | 勉強

アート&アクティビズム


先週NY滞在中にNY大学で行われていたイベントに参加。

アートを通して大量消費・大量廃棄社会に疑問を投げかける写真家Chris Jordanの講演会。
めちゃくちゃ面白かった!

もともとは弁護士さんだったそう。高額のお給料をもらって、週末は狂ったように高級品を消費していたけど心は満たされず、自殺を図るほどの鬱状態に陥ったのちに、趣味だった写真を仕事にしようと決意したとのこと。
最初は色彩の美しさに惹かれゴミ収集所に山積みになる廃車やペットボトルの山を撮っていたが、徐々に信じ難い量のゴミの存在が一般に知られていないことの危機感を増す。自身の過去の消費行動と精神状態への疑念も相まって写真を通して現代の高度消費社会の暗部を照らす方向へと作品がシフトしていく。

a0158818_0415198.jpg一枚の写真の中には納まりきれない何億という数のゴミが一日で廃棄されているわけで、その数を視覚化したいと考えたChrisは一定の数のモノを写真に収めた後、実際の数に追いつくまでその写真を複製&合成することに。左の写真がその一つ。一日の廃棄量まで行くともはや水平線まで続くゴミの海。気が遠くなるような、気分が悪くなるような膨大な量が視覚的に迫る。

写真のすごさというのは数字を聞いただけではイメージ出来ないインパクトを知覚させてくれるところ。人間は1,000を超える数というのは具体的に理解できないそう。国家の負債が何十兆円、なんて言われても一体それがどれぐらいのものなのかさっぱり分からないのと一緒。そうなるとどんどんその問題から距離が離れてしまう。最終的には自分とはまったく無関係のものとなる。

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視覚に訴えることでこの意識を変えようというのが彼の狙いだが、一方で彼が強調していたのはこうしたものすごいインパクトの写真を見せられたところで人の意識や行動が本当に変わるのか、というとへの疑問。廃棄された携帯電話の海から自分が一つ取り出すこと(捨てないこと)でこの写真になんの変化が起こるのだろう?裏返していえば、この携帯電話の海にたった一つ投げ入れ(捨てる)たところでたいしたことじゃない、と考えてしまうもの。消費者アクティビズムでは「一人一人の行動が大事!」という個人をエンパワーするメッセージが多いけど、「それって皆本当に心からそう思ってる?」「責任ある行動をしながらどこかで自分だけ頑張っても・・・みたいなむなしさ感じない?」というChrisからの真っ直ぐな問いかけ。はい、感じます・・・・。彼はそういった「ディスエンパワメント」されている、という意識をきちんと認めてあげて向き合うべきだ、と言っていた。

「We do not matter」をどうやって「We do matter」に持っていくかが重要、と。問題の根源は行政の意識ではなく、人々の意識だ。まだ私たちは行動を起こすに至るほど怒り、悲しみ、恐怖、絶望を抱いていないだけだ。みんな感じる力を失っている、アメリカ文化は最も感じることから遠ざかっている気がする、とも。戦場は社会や世界ではなく、私たち自身の中にある。

a0158818_0505149.jpgさて、異様な興奮状態で帰路にはついたものの、彼の講演に果たして私は「エンパワー」されただろうか?少なくともおなかの下の方から這い上がってくるようなものすごい気持ち悪さを「感じた」ことは確かだ。それでも私たちの生活は身動きが取れないほどすっかり大量消費社会のなかに組み込まれている。大規模で複雑な消費システムに依存して生きているのだ。この矛盾に対する彼の言った「ディスエンパワメント」の感情は消えないだろう。「We do matter」と高らかに宣言する自信は到底無いけれど、これはもう個人の価値観として矛盾や限界や疑問を受けとめながら小さな行動を積み重ねるしかない。無限分の1はゼロではない。
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by nanacorico0706 | 2010-03-09 00:51 | 勉強

ジャクリーン・ノヴォグラッツさんに会う!


NY滞在中。
昨晩はAn Evening Celebrating the Power of Entrepreneurs to Change the Worldなるイベントに参加。

a0158818_1344120.jpgお目当てはパネリストで参加していたAcumen Fundの創設者ジャクリーン・ノヴォグラッツさん。実際お会いしたらすごく細くて小さくて若くてオシャレで人懐こい感じだった。洗練された大人の女性、というイメージがあったけど前のめりになって他のパネリストに反論する様子は快活な大学生、といった雰囲気で(怒られますね)真っ直ぐで純粋な気持ちを持ち続けているのだろうなーという印象。


パネル自体は短時間でさらっとした感じだったけど、いくつか印象に残ったトピックを。

*利益を出すことと利益の極大化は違う
事業としての持続性を考えるとソーシャルビジネスにとって利益は重要。だけど利益の極大化は長期的に見れば持続不可能なことがほとんど。バランスが重要。

*「for profit」でも「non profit」でもなく、「zero profit」を目指すべき
リターン無し、回収&再投資だけを前提にした投資が今後のソーシャルビジネスに鍵になる、という話。Acumen Fundの提唱しているPatient Capitalという概念がまさにこれだと思う。配当を求めない長期的投資、もしくは金利ゼロの長期貸付。ジャクリーンは「今の世界は相互に強く結びついた一つのtribe(部族?家族?)と考えるべき。Zero Profitの投資はスピリチュアルな次元の資本行動だと思う」と。

*政府の機能は引続き重要
資本市場をベースとした事業ではどうしても本当に貧しい人、そもそも歴史的にマーケットから排除されている人々にサービスが届かない、とジャクリーンが断言していたのがとても印象的。成功した事業の規模を拡大するにつれてターゲットがミドルクラスに移行して貧困層がどんどん取り残されていく状況を危惧している、とも。アフリカで援助資金によって無料配布されているマラリア対策の蚊帳を例にとって、政府の関与=持続不可能な事業と考えてはいけない、補助金が重要な場面もまだたくさんある、と。


営利か非営利か、という二者択一自体がもう有効じゃないのだと再認識。政府相手に蚊帳を売っている会社は営利事業だけど、蚊帳が人々に配布される過程だけ見れば非営利だ。インドで水供給をしている会社は対顧客としては営利事業だけど、資本の大半は先進国のドナーからの寄付で成り立っている点は非営利。いったいどこを切り取って営利・非営利とするか、非常に複雑。とはいえコレ!と決める必要は必ずしもなくて、社会的な利益を最大化出来る仕組みを考えていくことが重要なのだと思う。
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by nanacorico0706 | 2010-03-06 13:47 | 勉強

一日中BOPについて考える


今月中に修論のプロポーザルを書かなきゃいけないので一日中ずーっとBOPBOPBOPと考える・・・・もうああでもないしこうでもないし・・・・。ダメだ、甘いもの食べよう!とドーナツに逃避。また思いついてネットで調べて・・・また袋小路・・・。どうあああ・・・もう一個ドーナツ食べよう。

ずっと引っかかっているイシューは、一昨年マイクロファイナンスの講演会で講演者の方に聞いたお話。

無電化村の住民にマイクロファイナンスを活用してソーラーパネルを売るBOPビジネスが紹介されていた。電気の無かった村にローンとセットにすることで貧しい人にも手が届くサービスの提供を可能にした、というストーリー。ステキ!なのだが、講演者の方が漏らした現場の戸惑いが頭から離れない。

~確かに電気は供給されるが政府が電気を提供している都市の豊かな人の何倍ものコストを負担していることになる。マーケットベースのアプローチが常に善と言えるのかは難しい問題。と。

特にインフラ、医療、教育等、従来政府が提供すると認識されてきたサービスにおけるBOPビジネスはどうしても倫理的な問題が付きまとう。こういったサービスは「全ての人が平等に受けるべし!」という社会的コンセンサスがあるわけで、いったいビジネスにこの要請が果たせるのか?という問いかけがある。

とはいえ、じゃ政府にはこの要請が果たせるわけ?となると、それが果たされていないのが現実。だからこそビジネスセクターが腕まくりしているわけだし。政府が電気を通すまで我慢して下さい、というのも倫理的に正しいわけがない。値段は高くってもbetter than nothing、ということか。

そもそも政府かNGOか営利企業か、みたいなあれかこれかの議論をするべきではない段階にきているのだろうとは思う。パートナーシップとかコラボレーションという言葉が耳タコぐらいに頻出するのも開発のアクターが多様化しているから。でも耳タコのわりには中身が空虚というか、パートナーシップってなんだ?どういったビジョンを共有しているの?というところになるととってもボンヤリしてしまう。

ダメ出しするのは簡単。クリエイティブな解決策を提案するのは至難。

もっと事例をさらって何かヒントを掘りあてたい。面白いケースがあれば教えて下さい!!
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by nanacorico0706 | 2010-02-19 15:48 | 勉強

マイクロファイナンスの授業が地元紙に取り上げられました


地域の難民の方々向けの小規模融資プロジェクトを組み込んだマイクロファイナンスの授業が地元紙に載りました~

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ジュードったら教祖みたい・・・

これが「私たちの」プロジェクトになってしまわないように気をつけなければいけないなーと思う。「どんなことをしてみたいですか?」と聞いても「いやー思い浮かばないな。。。」とうつむく彼らに「これはどう?」「こんなことしてみたら?」とついつい前のめりになってしまいがち。これではいかん。もっと時間をかけて彼らの思いとかニーズとか、将来的なビジョンなんかをあぶり出していくようなプロセスが必要な気がする。最終的にProposalが通らなくても、試行錯誤の過程で、彼らがネットワークを広げたり少しでも何かスキルを身につけたり出来れば、ムリヤリ結果を出すより何倍も価値があるはず。

アイスブレイクにはやっぱりお酒を飲みながら語るしかないかな・・・。ウノか人生ゲームがいいかな・・・。
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by nanacorico0706 | 2010-02-10 10:52 | 勉強

マイクロファイナンス


今学期の目玉授業はマイクロファイナンス!
ちょうど一年前ぐらいに大学院の願書に「マイクロファイナンスやりたいんです!フェルナンド教授の授業を取りたいんです!」と鼻息荒く書いていたことを思い出す。
そのフェルナンド教授の授業を本当に取っちゃってる。人生って面白いなぁ。フェルナンド教授は「ジュード」と生徒からも愛称で呼ばれる超ラブリーな先生。a0158818_13464641.jpgこの風貌。常に穴の開いたポロシャツを着用。スリランカ出身で故郷のNGOの活動も積極的に支援する社会活動家でもある。

授業の中心はもちろん途上国のマイクロファイナンスだが、今回のコースでは地元ウースターに住む難民の方々向けにNGOが立ち上げた小規模融資のプロジェクトに生徒も参加することに。
イラク、リベリア、ミャンマー、ブータン、ブルンジなどからの避難民のコミュニティと一緒にビジネスプランを考え、NGOにプロポ―ザルを提出する。マイクロファイナンスと言っても先進国アメリカではまさか一口20ドル、なんてわけにはいかない。150万円が上限でプラスローカルの銀行にも融資交渉中。途上国と違ってインフォーマルセクターなんてないわけで、ビジネスを立ち上げるとなると規制やら税金やら会計処理やらで何かと複雑。大変なプロジェクトである。

今日は担当するコミュニティのメンバーの方との顔合わせ会。
私のグループはブルンジ難民の方3人とチームを組むことに。アメリカにきて2年ほどの女性一人、男性一人と滞在6カ月の男性1人、という構成。
そもそもブルンジってどこだ?とWikipediaで調べるところからスタート・・・
ルワンダの内紛で知られるフツ族とツチ族の対立はブルンジでも根強く、独立以降ずっと内戦状態のようだ。一人当たりのGNIは世界最下位だそう。

普段は何をされているんですか~?と当たり障りのないところから会話を開始。
最も英語が達者で社交的な女性は内戦で旦那さまを亡くし、5人の子供とタンザニアの難民キャンプに移住、その後アメリカに渡ってきたとのこと。慣れない土地でシングルマザー、4歳から17歳までの5人の子供、もうなんかもうひれ伏したくなるような頭の上がらなさ。
底抜けに明るい。
キャンプの生活に比べればマシだわ~子供も学校に行かせられるしね!と笑う。

こちらに来て2年半という男性は40代ぐらいだろうか。英語は片言。ブルンジでは高校の先生をされていたとのことだが、こちらにきてようやく得た仕事はTJ Maxxという激安アパレルでの梱包作業。それも12月にレイオフされたという。ジュードのプレゼンに必死にメモをとる姿が印象的だった。

最も若い男性はまだこちらに来て6カ月。英語の学校に通っているとのことだがまだ殆どコミュニケーションは取れない状況。グループの一人がフランス語を喋れたのでなんとか会話できた。難民キャンプでは看護師をしていたとのこと。

つまり、全員無職である。ビジネスの経験は無い。英語は日常会話程度。
さてここからどうやって事業を作っていくのか・・・一瞬、途方にくれる。
が、時間をかけて会話をしていくうちに少しずつ彼らの希望も引き出せてきた。まずは出来る限り深くコミュニケーションをしなければ。彼らの抱えている思いや問題を共有し、一緒に考えていく。まずはそれが大事かな・・・。ということでまずは来週ホームパーティーを開くことに。頑張って日本食作っちゃおう。
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by nanacorico0706 | 2010-01-28 14:37 | 勉強

BOP幻想??


BOP層は消費者ではなく生産者として捉えるべき、というBOPビジネス批判の代表例として良く取り上げられているKarnaniの論文「Mirage at the Bottom of the Pyramid」を遅ればせながら読んだのでまとめと雑感。


・BOP層の定義が不明確、且つその規模が誇張されている。
Prahaladは1日2ドル以下で生活するBOP層が世界に40億人存在すると主張するが、世銀等他の調査によれば実際は多く見積もっても27億人程度、との主張。そうなると$13兆と見積もっているBOP市場は実はその10分の1程度の規模しかないことになり、ビジネスセクターに過剰な期待を与えている。

・最も貧しい人にはアクセスしていない
最も良く批判される点だと思うが、BOPビジネスとして紹介されているものは実は貧困ライン以下で生活している人には高すぎて手が届かないケースが多い。

・多国籍企業の役割が強調されているわりに、成功例が少ない
BOP層向け商品の開発には徹底したコスト削減が必要、且つ労働集約的になりがちなので大規模な多国籍企業には本質的に不向き。特に株主利益を常に念頭に置かなければならない上場企業は利益率の下がる可能性のあるBOPマーケット参入はハードルが高い。

・BOPを消費者として見ている限りは貧困は解決しない
所得の向上が貧困解決の最も重要な要素。BOP層を消費者としてではなく、生産者とみなすべきである。


なかでも最も考えさせられたのが以下2点。

・BOP層に教育や健康より嗜好品にお金を使うインセンティブを与えている
TVやコカコーラやビールの販売促進は本当にBOP層にとって望ましいのか?これは倫理的、社会的責任が伴うデリケートなトピックだと思う。贅沢品を売るべきではない、という態度は先進国の人々の傲慢、余計なおせっかい、という意見もある。他方で先進国でも販売規制の対象となっているアルコールの販売は法制の整っていない途上国で多国籍企業が無制限に販売をするのは如何なものか、というのは説得力のあるところ。

開発にはこの手のジレンマが常につきまとうような気がする。例えば地域の人々に意思決定を委ねる参加型開発手法は女性のエンパワーメントを促進するとして評価されているが、あるケースでは村の女性たち自ら伝統的に女性の仕事とされている手工芸のサポートを要請した。現場の実務者は彼女たちの意思決定の尊重を建前としつつ、男女間の役割分化を助長してしまうような結論にどう対処して良いかジレンマに陥ったとか。これは本当に難しい問題だと思う。男女間の平等という価値自体が西洋的な社会・歴史背景に基づいている部分が多いし、地域固有の伝統や文化と衝突する際に、アウトサイダーである開発実務者はいったいどう行動するべきなのか?

だれが意思決定すべきか?は結論の正しさだけではなく、決断を下す正当性の問題でもある。TVなんか買うお金があったら子供の教育に使いなさい、なんて言う権利が私にあるだろうか?Prahaladの言うそういった態度は'arrogant and patronizing'というのは一理ある。一体誰が最も正しい判断が出来るのか?そうする権利があるのか?

・小袋戦略はUnit Priceを上昇させている→政府の機能が軽視され過ぎている
典型的な一回使い切りタイプの小分け商品は確かに小売価格は安いが単価はむしろ通常の商品と同じか高いケースが多い。つまりBOP層は豊かな人より高いコストを負担している。さらに一回使い切りだと量の調整が難しく無駄が多い、ゴミの増加による環境面への影響も批判されている。

実は単価が高い、というのは最もなのだが、それでも全く買えないよりマシ、という反論もあるだろう。例えば電線の届いてない地域にソーラーパネルを持ち込み、安価で電気を配給しようというビジネスが増えている。電力の供給は素晴らしいが、実際には貧しい村の人々は政府が電気を供給している都会の豊かな住民より高い電気代を負担することになる。本当にこれでいいのだろうか?もちろん良くない。が、かといって全く目途の立たない電線の建設を待ち続けるよりはマシ、better than nothingというのも説得力がある。実際にはどちらが良いか、という問題ではなく、いかにこういった企業とパブリックセクターを協働させて長期的に地域間の格差が無い状況に持っていくか、が現実的に必要なアプローチなのだろう。

KarnaniもBOPビジネスにおける政府の役割の軽視を痛烈に批判している。
'By emphatically focusing on the private sector, the BOP propositions detracts from the imperative to correct failure of the government to fulfill its traditional and accepted functions such as public safety, basic education, public health, and infra-structure.' 企業やNGOは政府に取って替われるわけでも、そうするべきでも無い。
現実には、従来政府の機能とされてきたサービスにもどんどん企業が進出している。開発の民営化、と批判されているこの状況が今後どうなっていくのか?どうなっていくべきなのか?新学期の課題。まだまだ山のような読むべし論文リスト・・・
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by nanacorico0706 | 2010-01-16 11:17 | 勉強

次世代CSR


Corporate Social Responsibilityを越えたCorporate Social Innovationを提案する面白いスライドを発見。

CSRはネガティブコントロールやマーケティングのツールから企業活動自体の内部変革を伴うものにシフトしつつある、というのが分かりやすく示してある。
社会における企業の存在意義を徹底的に見直し、事業を再構築するのがCSRの本質と捉えられるようになってきているのだと思う。

BOPやソーシャルビジネスに関する議論は「ビジネスが世界を変える!」みたいなすごくポジティブなメッセージが多いけれど、実際は「ビジネスが変わらないと世界は変わらない」というのが本当のところなのではないか。
スライドにもあるようにマーケット至上の資本主義構造が見直されないまま、安易に「ビジネスが途上国の貧困を解決する!」といった方向に流れていくのは何か違う気がする。

企業の強みを生かして社会問題を解決する、という最近の大きな流れは素晴らしいこと。
商社時代にビジネスセクターに如何に優秀な人材、ノウハウ、技術、情報が集まる仕組みが出来ているかを実感した。
この豊富なリソースがお金儲けではなく開発を取り巻くあらゆる問題に振り向けられるとなるとそのインパクトはすごい。
ただ、目に見えるインパクト以上に重要なのは、こういった過程を通して企業の社会における位置づけ、資本主義のあるべき姿を再定義する作業なのではないかと個人的には思う。
結局事業を動かすのは企業で働く一人一人の人間であり、その人間の持つ価値観と判断基準の集合。
だとすると、ビジネスにかかわるそれぞれの人の内的な変化が長期的には企業と資本主義を本質的に変えていくのではないか。
そういう意味で、「ビジネスが世界を変える!」という前向きな信念ではなく、「目の前の事業、自分の働く会社はどうやって変わっていくべきか?」という内省的な問いかけが、より重要なのではないかと思う。
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by nanacorico0706 | 2010-01-10 11:50 | 勉強

Conscious Consumerism


秋学期のFinal PaperでeBayが手掛けているフェアトレードや環境に優しい商品のショッピングサイトについて書いたこともあって、最近Conscious Consumerism、Ethical fashionが気になっている。
色々なところで見聞きする場面が多いので備忘の為にまとめ・・・

Loopt Works
洋服の生産過程で廃棄される大量の余剰材料を使って作るアパレル商品。
布、ボタン、ジッパーに至るまですべてアップサイクル(廃棄物を別の商品として生まれ変わらせること)で作られている。

RICKSHAW BAGWORKS
リサイクル可能なナイロン生地を使用し、シンプルな裁断、縫製、無駄なく生地を使い材料の廃棄を最小限にしたバッグ。ゼロシリーズは生地の廃棄がほんとにゼロ!

Oliberte
メイドインアフリカのかっこいいスニーカー。リベリア産のゴム、エチオピア産のレザーを使用して地域の工場で生産。リサイクルしたいので履きつぶしたら捨てずに送り返してね、というメッセージも。

Escama Studio
なんとプルタブを再利用した女性用バッグ。ブラジルの女性で構成される組合が伝統的なかぎ針編みの技術を使って生産している。

Autonomie Project
フェアトレードのカジュアルウェアとスニーカー。オーガニックコットンを使用。ベビー服を買ったけど生地もしっかり、かわいかった。

Econscious Market
フェアトレードやエコ商品のショッピングサイト。購入価格の10%を自分の好きなNGOなどに寄付出来る。

ちょっとした流行りになっているとも言えるエシカルファッション、色々と議論のあるところだけど、モノの生産過程を根本的に見直す、という姿勢はやっぱり面白い。これから先、グローバリゼーションの流れに逆行するような価値観、たとえば、スローダウンする、スケールダウンする、不便にする、完成品ではなく生産プロセスで選ぶ、が主流になっていくだろうか・・・?
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by nanacorico0706 | 2010-01-08 13:11 | 勉強

Walmart Paradox


昨年の10月に出席したNet Impactのカンファレンスのセッションの一つで面白い話を聞いた。
BBMGというマーケティング会社が行った2009年の消費者意識調査によると、2000人のアメリカ人に「米国で最も社会的、環境的企業責任を果たしている会社は?」という質問のトップ1位、ワースト1位、どちらもWalmartだったとのこと。
Walmartパラドックス。

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by nanacorico0706 | 2010-01-07 08:50 | 勉強


2年間の米国留学生活をゆるゆると綴ります・・・
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