旅の途中



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BOPとTOP


パキスタンに来て、日本出身です、というと良くされる質問の一つが「この国の貧困の状況に驚いたんじゃない?」というもの。
実際には、私が最も驚いたのはむしろこの国のお金持ちのお金持ちっぷりだ。

パキスタンのスーパーリッチは宮殿か!ってぐらいの巨大な家に住んでいる。玄関入ると吹き抜け&らせん階段、なんてザラ。メイド2人、コック2人、車3台、ドライバー3人、AK47を持ったガードが2人・・・。こんな家が1軒2軒ではない。カラチやラホールに延々と並んでいる。延々と。一体どうなってるんだろう?てゆーか誰なんだ?ここがアメリカ西海岸ならなんとなくわかる。ヘッジファンドのトレーダーとかこういうとこ住んでそうよね~とか、シリコンバレーで成功したITベンチャーの社長さんかしら~とか、ハリウッドの映画関係者だったりして~とか。でもここはパキスタン。そんな巨万の富を気付くような機会がごろごろ転がっているわけはないだろう。一体だれだ?なんでこんなに金持ちなんだ?

今更驚くことでもないのかもしれないが途上国における貧富の差は想像を絶する。数メートルごとに物乞いに遭遇するこの国で、お城のような豪邸で調度品に囲まれてメイドの運んだワインを楽しむ人が居る。そんなこと文明が興って以来の万国共通の状況かもしれないが、やはり気持ちが悪すぎる。それに、外資をどんどん誘致して経済成長の空気に溢れていたタイやベトナムなどの東南アジアに比べるとこの国にはミドルクラスが膨らんでいるという勢いがあまり感じられない。

なぜだろう?といろんな人に聞いてみると、一つ大きな要素として浮かび上がってくるのは、この国に今なお色濃く残る階級社会、封建制度。都市部に豪邸を構えるスーパーリッチの原点は植民地時代からの大地主。地方に大規模な農場を持っていたり、はたまた代々の政治家だったりする。

例えば、カラチの位置するシンド州では80%の農民が土地無し農民、いわゆる小作農だ。地主と契約を結び作物を分け合うShare croppingという形態で働いている。雇われる側の貧しい農民は不利な契約条件を飲まざるを得ないことも多く、貧困から抜け出せない。小作農家の生産高のうち、地主の取り分は上限40%と法律で決められているが守られているケースは稀だという。特に80年代以降、トラクターなどの導入により農業の機械化が進むと、余剰の労働力となった小作農は一方的に土地を追われ、大量に都市に流れ込む。都市部には増加する人口を吸収するだけの雇用機会はなく、結果として多くの人々がスラムなどの過酷な居住環境で生活することとなる。

そんなパキスタンでも政府主導の土地改革が独立後2度に亘って行われている。所有出来る土地の面積に上限を設け、超過する分を政府が安価で買い上げるという典型的なもの。が、買い上げられた土地は申告されたうちの30%程度にしか満たなかった。そもそも申告されていない土地が大量にあると言われている。この辺りは汚職が日常茶飯事のパキスタンでは容易に想像がつく。

因みに日本では戦後GHQの力を借りて大規模な農地改革が行われたのは周知のこと。政府が買い上げた大地主の土地はかなり安価で小作農に売り渡された。自作農の割合が50%程度から90%程度まで増加したというから大成功だったのだろう。実は戦前から政府は農地改革を試みていたが大地主の反対にあってドラスティックな改革には至らなかったらしい。敗戦、GHQによる占領、という歴史上の一大事が有って初めて実現した改革。あるひとの言葉、「通常土地改革の実現には数々の深刻な反対、障害が現れて、容易に実行できるものではない。とてつもないエネルギーを必要とする。社会の基本のカタチを変える“革命”のようなものと考えたほうがよい。」納得。

社会の基本のカタチを変える=革命。と配置されているのが面白い。説得力があると思う。パキスタンに来て2カ月、貧しい人に寄り添って彼らの生活を少しでも良くしようと一生懸命働く人はたくさんいる。だけど、これでは社会の構造に根本的な変化を与えることにはならないんじゃないか?BOP層をターゲットに、安価な住宅を提供する。スラムでの生活に比べれば衛生環境も居住環境も大幅に改善する。住人は健康になり、生産性が上がって所得も少し改善するかもしれない。だけど、結局はBOPの人をLower-middleに押し上げているだけに過ぎないのではないか?ほんの少しピラミッドの底辺が上がったその間に、ピラミッドの頂点は1ミリも動かない。もしくはさらに頂点を釣り上げているかもしれない。

貧困の原因はリソースの不足ではなく、リソースを分配するシステムの欠如である、という言葉を思い出す。貧困をなくそうとするとき、私たちはいつも「彼らはなぜ貧しいのか?」と問う。でも私がパキスタンで感じた疑問はむしろ、「彼らはなぜこんなに裕福なのか?」だった。BOPをピラミッドの上流へ押し上げるだけが貧困削減ではない。ピラミッドのトップに切り込んでやるべきことはたくさんあるのではないか。
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by nanacorico0706 | 2010-08-03 21:39 | パキスタン

Thanks Brunch


ラホール滞在も残すところ1週間。今日はお世話になったホストファミリー2家族を招待してブランチを。
最初の2週間泊めて頂いたご家族はムスリム。今お世話になっているご家族はクリスチャン。
宗教の違いなんて全く問題にならないような人たちだって最初から分かってはいたけど、それでもやはり面識のないご家族を引き合わせるのはすこーし不安もあったりした。個人的には。
結果、本当に穏やかで、温かで、楽しいブランチになった。ホストマザーどうし、ホストファザーどうし、本当に楽しそうに談笑しているのを見て一人涙が出そうになっていた。

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一つは、パキスタンに来てから宗教と言うものを今までになく深く深く考えさせられていたからだと思う。特に今のご家族と生活するようになって、キリスト教があからさまにテロのターゲットになるこの国でクリスチャンとして生きる信念の強さ、反面、日々感じている生き難さ、を目の当たりにしてきた。来客もあったし、友人の話も良く聞いていたけれどほとんどがクリスチャンだったと思う。だからこそ、ことさらにこの宗教を異にする家族同士がテーブルを囲んで笑い声を上げているのがもうなんだかすっごく感動的だったのだ。帰りの車の中で「本当に素敵な家族ねー今後も連絡を取り合っていくわ」とホストマザー。胸がいっぱいだった。

もう一つは、この国で得たたくさんの素敵な出会いに改めて感謝が込み上げてきたから。人との出会いというのは本当にかけがえが無い。偶然に人生のある一時を共有する人たちをこんなに愛おしく思えるということはなんて幸せなことだろう。

昔ある人が「人生の価値は感動の量で決まる」と言っていて、うん、そうかもしれないなぁと思っていた。そして私にとって感動は人との出会いとその関係の深まりに比例すると思う。人間に対する愛情の量に比例すると思う。「この人好き!」って心から思う感覚。それはその人の人間性ももちろんあるだろうけど、根本的には人間という生き物に対する愛情だと私は思う。共有出来ないこと、異質な部分なんて山ほどあるけど、でもやっぱり「この人好き!」「ああ出会えて良かった」と相手を愛おしく思う瞬間、一瞬でもそいういう出来ごとがたくさんあること、それが自分にとっての最も大きな感動。人生の価値。生きて行く喜び。

そしてそんな感覚を自分の国から遠く離れたこのパキスタンで体いっぱいに感じていること、感謝。あー今から去る日を考えると泣ける。でも必ずお返しをしたい。必ずこの国に帰ってきたい。たくさんの大事な人が出来たから。
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by nanacorico0706 | 2010-08-01 20:04 | パキスタン


2年間の米国留学生活をゆるゆると綴ります・・・
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