旅の途中



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原丈人『新しい資本主義』


原丈人さんの『新しい資本主義』、読了。a0158818_072862.jpgソーシャルインベストメントについてずっと考えている今日この頃。社会的投資、というとなんだかふわっと社会貢献的なイメージあるけど、結局本質は(少なくとも今のところ)「金融業」であると思う。「金融」の果たす役割って何だろうということのヒントになることも多く、さらっと読んだわりにインスピレーションが多かったので備忘録。

「金融は本来脇役」
当り前の事実だけどそう捉えられていなかったのがここ何年かの風潮だったと思う。金融は「あくまで縁の下の力持ちであって主役や起業家であり企業人」「産業の中心にはなりえない金融業が我が物顔でこれほどまでバブルによって拡大してしまった」。ソーシャルインベストメントは「業」としてわがもの顔バブルにならないか?
2007年のヘッジファンド上位10人の個人所得を合計するとトヨタの2007年度純利益を上回る額だった、という話は衝撃的。気持ち悪い。

「株主目線の経営指標」
IRRやROEなど、短期的な株主利益を測るのに便利な指標がビジネス界ではスタンダード。社会人になった時には既に常識として叩き込まれたので疑問に思うこと無く受け入れていた。指標ってどこか科学的なものという先入観があるものでどういう歴史的・社会的背景があってそういう指標が主流になったのか、というところを意識することって少ない。でも指標もシンボルであり、意味であり、価値判断の固まり。IRRはソーシャルインベストメントでも普通に使われているけど、どうなんだろうか。投資資金の回収は早ければ早いほどいい、という固定観念を刷り込んでないだろうか?

「内部留保を大事に」
内部留保の配当による吐き出しのプレッシャーが長期視点の研究開発を阻害してきた、という。この問題、BOP向け消費者ビジネスの文脈で考えると価格に大きく影響すると思っている。BOP向け商品の難関の一つは「低価格化」だけど、マーケットレベルの株主利益・配当を念頭に置いて事業モデルを作ると必然的にマージンが増えて価格が上がる。株主なんていない方がいいんじゃないか、とさえ思う。株主がいなければ何かあったときの保険としてうすーく内部留保を確保するだけで良くて、その分ギリギリまで価格を下げられる。アキュメンファンドのような社会的投資家の回収目標期間は5~7年。これって本当に長期か?そもそも投資先がきちんとサステナブルになっているのだったら回収しないで半永久的にそのまま回せばいいのだし、投資先の会社内で内部留保をどんどん再投資すれば事業のスケールは大きくなっていく。なぜ回収する必要があるんだろう?

「新しい株式会社」
原さんが手掛けているBracNetでは利益の40%を教育・医療といった公益事業に支出できるようになっているという。日本でも稼いだお金の全部、または半分くらいまでは公益のために使えるような株式会社を作れないか、と考えているそう。
利益は本来目的ではなくてただの結果だと思う。企業が行う経済活動の目的は例えば食糧の提供とか、インフラの提供とか、幸せの提供とか、そういうところにあるわけで、それを実行した結果残るものが利益であって、どれだけ残るかはそんなに大事じゃないはず。ドラッカーの言葉を借りれば利益は手段。将来に亘って幸せの提供という会社の使命を果たす為に、最低限倒産しちゃいけない、その為の手段。
「手段」であるはずの利益を「目的」とした投資家が参入すると本来の事業目的と別のベクトルが働く。厄介なのは彼らが「Owner」であることだと思う。株主というのは法的に会社の所有者なのだ。そうなると力関係は構造的には所有者が上。利益の配分にもこの構造が大きく影響する。ソーシャルインベストメントの現状のアプローチは「投資目的」を「経済的利益」だけではなく、「公益」も含めて考える人たちを増やしていこうというもの。ただし「投資家」「Owner」というステータスに変わりはなく、構造上の所有形態はそのまま。現状では「通常の投資家みたいな短期的利益は要求しませんよ」という個々人の倫理的コミットメントだけで法律上の規制もない。どの程度が高い利益でどの程度が短期的なのかは非常に曖昧。人々の投資に対する価値観が変わること、倫理観をマーケットに組み込むことは大事だと思うけど、その価値観を反映した形でマーケットの構造やルール自体を変えることも平行して必要と思う。


「全ての企業は中小企業になっていく」
想像性や柔軟性を保つためには企業のサイズは大き過ぎちゃダメだ、というお話。シュンペーターの主張とだぶる気がして興味深かった。ちょっと視点は違うが、利益追求型投資家の話に戻って、中小企業化をするというのは会社の自立性を保つことにもなると思う。もっというと、投資家、いらなくなるのではないかと。例えば税後利益の全部をコミュニティの共有ファンドに寄付して、プールしたお金から市場よりだいぶ安い金利で借り入れが出来るようにしたら投資家なんて呼び込まなくても継続的に事業を回していけるのではないか。立ち上げ資金は公的援助が必要かもしれないけど、その後は参加企業の合意で採算が取れるように利率を管理していけば、サステナブルになるのではないかと思う。それだと事業の規模拡大に限界がある、大企業の規模の経済に対抗できない、という反駁もありそうだが、原さん理論的には大企業ほど柔軟性を失って滅びて行く、全ての企業は中小企業化すべし、ということ。

ざっくりしたアイディアを述べている本ではあるけれど、興味のあるトピックが多く色々と刺激を受けた。公益資本主義、色んなところで議論されているみたいなので追ってみたい。
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by nanacorico0706 | 2010-11-23 00:10 | 読書

分からない、を大事にする


つい先日ある方がTwitterで「肯定と否定の間に『分からない』、という淡々とした態度がある」ということをつぶやかれていて、なるほど、と思った。

というのも、少し前にある非営利団体に所属されている人とお話していた時から気になっていたことがあったのだ。古くて大きな団体で新しい事業を立ち上げられたその方は、まず部長に提案を持っていった。

部長「うーん、面白そうだけど俺よく分からないから理事長に相談してみよう」

理事長に企画書を持っていく。

理事長「うーん、新奇性があっていいけどイマイチ分からないから代表のとこ持っていっちゃおう」

マジ?!という感じで戸惑いつつも団体のトップにまで話が行ったところ代表の方すごく気に入っちゃう。新奇事業実現。

という話。聞きながら、自分で判断を下そうとしない、典型的な日本的意思決定ね・・・という想いと、「分からん」と素直に言えちゃう潔さ、すごいかも、そして部下としてはそういう人有難いかも、とも思った。人間どうしても理解できない⇒否定。となりがちだから。

そして最初にあげたつぶやきを発見。否定と肯定の間に有る「分からない」という淡々とした態度。それは決して悪いことではない。もちろん最終的には決断をしなきゃいけないことばかりだけど、分からないと認めることは分かった気にならないということでもある。分からないと認めることで勉強したり、相談したり、考えたりしてそのトピックと向き合い続けることになる。この淡々とした営み、実はすごく大事なのではないかと思ったのです。

たまに、迷いなく生きている(ように見える)人が羨ましくなる。これが正しい、とはっきり軸を持っている人。自分のやっていることは天職だ、と胸をはって言える人。そういう人の言葉には力が有り、人を説得するオーラがある。自分はいつも何が正しいのか迷ってばかりいるのでそういう人がすごく羨ましい。

でも、分からない、ということに焦りを感じなくてもいいのかもしれない、と思った。むしろ、「分からない」という感覚を大事にしていこうとも思う。白黒はっきりしなきゃいけないことも多いけれど、自分が向かっている大きな「?」についてはそんなに焦って答えを出さなくていいのだ。白にも見えれば黒にも見えるし・・・・もう分からん!という混乱した気持ちを淡々と受け止めて行こうと思う。そして考え続けようと思う。

迷いなく生きている(ように見える)人も、実はいつもこういう不安感と戦っているのかもしれない、と思ったのは、アキュメンファンドのジャクリーンさんからメールをもらった時だ。BOP向けの水ビジネスはただでさえ何もしない政府をますます「やんなくていいや」と思わせてしまうのではないか?という少々批判的な問題提起に対して、真っ先に返信をくれたのがなんと代表のジャクリーンさんだった。アキュメンとして考え続けなきゃいけない問題だと思ってます、みんな意見出して!と。白でも黒でもなくて、みんなで考えて行きたい、という答え。

公の場ではかなりポジティブで、まっすぐで、キラキラで、ソーシャルビジネスのカリスマ!みたいなキャラだけど、ああ、実はすごく色んなことを迷ったり自問しながらトップをやっているのだろうな、とその時になんとなく感じた。そしてそのスペースを保ちながら行動をし続けていること、すごいことだと思った。

「分からない」と思ったまま行動出来なくなってはいけないけれど、分かった気になるよりは、分からないことと対峙し続けていくべきなのだろうと思う。
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by nanacorico0706 | 2010-11-08 07:37 | つれづれ


2年間の米国留学生活をゆるゆると綴ります・・・
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