旅の途中



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21世紀の共同体


むかしの日本にあったような伝統的な共同体はもう二度と戻らないんだよ。

と、先日友人と話していた時に言われてはっとした。彼はアートを通してコミュニティを活性化させたいという想いを持って仕事をしていて、何やら「コミュニティ」なるものについて語り合っていたのだ。が、途中で2人が持ってる「コミュニティ」のイメージがズレていることに気づく。そして彼の上の一言。伝統社会に基づいたコミュニティを復活させることはもう出来ない。全く新しいカタチのコミュニティを創り出していかなきゃダメなんだ。と。

私は未だに、高度消費社会を経て人間は伝統的な共同体の価値に円を描くように戻っていくのではないか、そうなるべきなのではないか、という固定観念がどこかにこびりついているのだと思う。

彼の言葉がストン、と落ちた。そりゃそうですよね。

大学院に来てから、昔の人間社会はなんてステキだったんだろーみたいな態度に傾いていたんだと思う。文化人類学の議論に触れることが多く、贈与と返礼に基づいた共存社会に対する美しい幻想がしみこんでいった。でも、前近代の社会のカタチをひも解くことの目的は、歴史を後退してそこに「戻る」ことを意味するのではない。私たちが常識だと思っている今の社会のカタチを疑い、一度その常識を壊し、またそこから新たに創り上げていくことが本来。

規範やモラルに基づいた伝統社会か、理性と利害に基づいた近代社会か、という二者択一ではないところに答えを見出そうとするダイナミックな思考態度が本当は必要とされているのだと思う。

新古典派経済学の始祖とも言われるマーシャルは近代社会の特徴は競争ではなくAssociation(協働・提携)にある、と言っていた。このAssociationは伝統社会における慣習に基づくものではなく、自由な個人が思慮深い協議に基づいて創り上げるものだ、と。市場と法律を軸に個人が自己利益を追求する競争社会でも、慣習と権威が個を支配する伝統社会でもなく、倫理と対話が支える協調社会のカタチを作っていくべきだ、というのが彼の主張だったのだと思う。

マーシャルの理念と通じる考え方をつい先日たまたま読み返していたボルスタインの『How to Change the World』に見つけた。ガンディーに強く影響を受けたらしいアショカの創設者ビル・ドレイトン曰く、「Gandhi’s greatest insight was recognizing early in the twentieth century that a new type of ethics was emerging in the world – an ethics grounded not in rules, but in empathy.」

ガンディーが夢見た「共感」に基づく21世紀の社会のカタチってどうあるべきか、を考えなきゃいけないんだと思う。社会のカタチを作るのは人々の価値観であり、人々の価値観を形成するのは社会のカタチでもある。

コミュニティについて語ってくれた友人のように、小さく、でも必死で行動している人がいる。大きな変化はいつも辺境からやってくる。早く走りだしたい。
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by nanacorico0706 | 2011-01-30 12:22 | つれづれ

Building Social Business ムハマド・ユヌス


a0158818_1341552.jpgグラミンバンクのユヌスさんの最新本。‘New Kind of Capitalism…’という副題にひかれて読んでみた。最近新しいタイプの資本主義、という売り文句にめっきり弱い。それが自分自身最も気になっているテーマだからだろう。

以下面白かったことをメモ。

配当をしない営利事業=Social Business
ソーシャルビジネスというと一般名詞的に使われがちな最近だけど、ユヌスさんはこの本でソーシャルビジネスを’non-loss, non-dividend company’と定義している。利益は出すけどその利益は基本的に株主や投資家には分配しないというもの。余剰利益はビジネス拡大の為の再投資、もしくは万が一の為の蓄えとして残しておく。このアイディア、好き。

ソーシャルビジネス、というとダブルボトムラインと呼ばれるように経済的利益と社会的利益の両者を追求する、というのが一般的。対してユヌスさんの言ってるソーシャルビジネスは少し違う。ダブルボトムラインでいう経済的利益、とは事業への投資家にもリターンを返していく、という暗黙の了解がある。一つ前のブログで書いたように投資家の期待するリターンを出せるビジネスだということが更なる投資を呼んでビジネスを拡大し、ひいてはソーシャルインパクトも拡大する、というのがダブルボトムラインのロジックだ。これに対してユヌスさんが推奨するソーシャルビジネスでは利益は誰かに帰属する所有物ではなく、会社の中に還流し将来のビジネスの為に使われる。

彼がダブルボトムラインを支持しない理由は2つ。

1.貧困層を対象に利益を追求するのは倫理的に受け入れられない
ここ、言い切るところが気持ちがいいな。私がパキスタンで抱えていた煮え切らなさも結局これなんだと思う。工事現場で汗水たらして働いてるこのお父さんが身を切る想いでおカネを払って買う住宅の利益がなーんでマンハッタンの投資マネージャーのとこに戻らなきゃいけないわけ?!みたいな。感情的な議論は一蹴されるので論理武装をしなければいけないわけだが、倫理的に受け入れがたい、というのは素直に共感。

2.長期的に、もしくは難しい局面に陥った時、経済的利益が社会的利益に優先する結果に陥りやすい。「時間が経つにつれて、社会的なゴールは徐々に重要性を失い、一方で利益を上げることの必要性がより深く会社の風土にしみこんでいくものだ。」と。

ソーシャルビジネスを支える法的スキーム
上記のような特徴を維持するのに最適な法的仕組は何か?現状では営利目的の会社形態が取られることが多いがこれはあまり適さない。会社はそもそも株主の利益を最大化するのが法的な義務。社会的利益を優先させたり、市場よりも高い賃金を払ったりすると理論上は株主から訴えられてもおかしくない。将来的にはソーシャルビジネスを既定・規制する独立の法律を作るべきだと主張。同意。ミッションドリフトと呼ばれる当初の会社としての社会的使命がそれて行くことを防ぐためにはその為の構造的な仕組が必要だと思う。

その他いくつか最近の先進的な法的スキームが紹介されていたが面白かったのが英国発のCommunity Interest Company(CIC)という新たな法人形態。公益に資することが認定された会社のみ取ることの出来る新しい形態で、最大の特徴は所有する資産の分配に制限がかかるアセットロックと呼ばれる規制だろう。CICの所有する資産は余剰利益も含め直接コミュニティに還元するか、もしくは再投資や担保として事業の拡大の為に使われなければならない。が、配当も可能。ただし株式辺りの配当率はイギリスの中央銀行の貸出レート+5%まで、また会社の利益全体の35%までしか配当出来ない。

こういう規制のある会社、もっともっと主流になっていったらいいのに、と思う。ソーシャルビジネスの議論ってソーシャルリターンをどう見るか、ってところに焦点があたりがちだけど経済的リターンはノータッチ、ということが多い。そもそも経済的リターンは何のためにあるのか?誰が利益を受け取る権利を持っているか?というところの議論がちゃんとされていないような。株主の期待にこたえる為の利益と会社の存続の為の利益ではかなり意味合いが変わってくる。私はダブルボトムラインの2つの柱は基本的にトレードオフの関係にあると思っているので経済的リターンにキャップを設けるのはソーシャルビジネスにとってすごく大事なことだと思う。

もうひとつ面白かったのは彼が以前から主張しているソーシャルビジネスの為の株式上場市場の話。ユヌスさんのいうソーシャルビジネスは配当を出せないわけだから、この市場への投資家が得る経済的リターンはゼロ。元本は回収出来たとしてもそれ以上の利益を得ることはなし。万が一株式の売買で差益が出た場合も同じ市場内で再投資しなきゃいけない。面白い。そんな株式市場誰も投資しないでしょ、というもっともらしい反応もありそうだけど、私はそうでもないと思う。究極的な質問は人間はそんなに利益志向なのか?ということ。次へ。

多面的な価値を持った人間
全体的に具体的なビジネスの話に終始しているものの、こういったことを主張している根っこにあるのはユヌスさんが信じる人間の価値観の多面性のようだ。Multidimensional peopleという言葉を使ってone-dimensional human beingsと対置している。自己の利益の極大化が生来の人間の性質ではない。’Success will be measured primarily by the contribution one makes to the well-being of the world’. 合理的に自己利益を追求する人間像を前提とするとフリーマーケットに任せるか政府による規制と再分配に望みをかけるか、という二者択一になる。が、ユヌスさん曰くもし多面的な価値を内包した人々で構成される社会があれば自発的な再分配(self-induced redistribution)が起こるという。お金持ちが政府から高い税金をかけられて再分配を強要されるのではなく、自発的に配当の無い会社に投資したり、給料が減ってもソーシャルビジネスに従事するようになる、ということだろう。利益の全く出ない上場株式市場、なんてちょっと非現実的にも思えるアイディアの奥には人間の本性って何だろう、という問いがある。

去年、大好きだった経済地理学の授業はアダムスミスの『国富論』でスタートし歴史を追って現代の経済学の論説まで辿りついたあと最後の授業は再びアダムスミス、今度は『道徳感情論』。ここでアダムスミスは社会正義について多く語っていて、最終的にそれを担保するものは国家という強制力を持ったシステムだけではなく、人間の倫理観だと言っていたと思う。経済における道徳や倫理の役割とは何か。今だから大事な問いなのだと思う。社会主義の可能性が消えてから20年、貧困や環境問題や金融危機や今の資本主義システムも危うい。倫理観や道徳や人間の善意や家族や社会に対する愛情、そういった経済の文脈から排除されてきた要素を見つめなおす地点に来ているのではないかと思う。
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by nanacorico0706 | 2011-01-15 01:39 | 読書

明けましておめでとうございます


と言うにはもはや遅すぎる感もありますが・・・
そして今更2010年を振り返ってみたりする印象に残った出来事ランキング。

1位はやはりアキュメンファンドパキスタンでのインターン。
これがきっかけでBOP、ソーシャルビジネス、CSR....などなどの広ーい興味分野から社会的投資、というテーマに修論のトピックを絞り込めた。3カ月の滞在中、充実!というよりはむしろモヤモヤしてウズウズしてグルグルになって実は消化不良で帰ってきたことが深く考えるきっかけにもなったように思う。今思えばあれで良かったのだ。

2位は出会いと別れ。10月、大事な人との別れがあって、糸の切れた凧のようになった。どこへでも行けるという軽さと、地面につながった確かなものが無い危うさと、両方受け止めてもっと強くしなやかになろうと思った。不思議なもので別れというのはいつも出会いを一緒に連れてくる。たくさんのステキな出会いに感謝。

3位は経済地理学の授業。
授業の内容も他の学生(みんな博士課程)のレベルも格段に高くて正直すっごくキツかった。けど、めちゃくちゃ楽しかった。毎週500ページぐらいのリーディングがもうすごく面白くて。貧困の問題と向き合った時に自分はやはり経済的な意味での貧困に興味があるのだということ、経済が社会において持つ意味、人間の幸福において持つ意味、に興味があるのだということ、を改めて気付かせてくれ、深く考えさせてくれた授業だった。

2011年はいよいよ卒業!就職!信じられない・・・
一体どこで何をしているのだろうか。自分に正直でありたいと思う。人にどう思われるか、を気にしてしまう弱い私だけど、本当に私が心の底から欲するものは何か、どんな人間としてどう生きて行きたいかにきちんと耳を傾けられるようにする。それが今年のチャレンジ。

大学時代に好きだった教授が川の上に掛っている橋に腕一本だけでしがみついている夢をよく見る、そういう心境で学問に当たっていると思う、と笑い話のように言っていた。それ以来そのイメージがずっと頭にある。人生は高みに向かって努力していく、というよりは何かにしがみついているようなものなのかも、と思う。しがみついた手を離してしまうものは常に自分であって他ではない。もういいかな、という囁きであって突風ではない。まだ、しがみついていたいと思う。涼しい顔をして一生しがみついていきたいと思う。

新しい年をこんなにワクワクした気持ちで迎えられる自分は幸せだ。いい年にしよう。そして世界中の人みんなが少しでもワクワクできますように!

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by nanacorico0706 | 2011-01-12 07:54 | つれづれ


2年間の米国留学生活をゆるゆると綴ります・・・
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