旅の途中



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No name no life


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名前というものはすごく大事だということを最近考えている。もしくは名づけるという行為。

私の尊敬する叔母が良く若い母親である姪っ子たちに対して「キツイことを言う時やカッとなった時ほど、子供の名前は「ちゃん」付けで呼びなさい。ななこ!ではなく、ななちゃん、と呼び掛けた瞬間に少し怒りが和らいでちゃんと子供の心に届く叱り方が出来るから。」と語っていた。本当にそうかも、と思う。呼ぶほうも呼ばれるほうも、発せられた言葉に乗せられた、言葉を超えた様々なメッセージを受けとめているのだろう。

ほんのすこーしかじっただけですがソシュールという言語学者が名前というのは既に存在する概念に与えられるものではなく、名前をつけた時に初めてその概念が生まれるのだ、というようなことを言っていたとか。内田樹さんによるソシュールの解説からの引用。(この本超おススメです!)

言語活動とは「すでに文節されたもの」に名を与えるのではなく、満点の星を星座に分かつように、非定型的で星雲状の世界に切り分ける作業そのものなのです。ある観念があらかじめ存在し、それに名前がつくのではなく、名前がつくことで、ある観念が私たちの思考の中に存在するようになるのです。

唸った。

名前を与えるという行為が私たちの思考を決定し、概念の意味を形作り、それを固定化していく。意味を得た名前は、その概念を表すものとして一定の範囲内の人々に受け入れられ、客観化されていく。

名前について考え始めたきっかけは今書いている社会投資に関する修士論文。社会投資、という新しい試みの本質は何なのか、開発の文脈においてどんな可能性と限界を秘めているのか、というのが自分の関心。この問いに答える為に、去年授業で出会った制度論(Institutional Theories) のフレームワークを使って社会投資の実践を解剖してみよう、というところまで行きつく。制度論のフレームワークで重要とされている一つの要素が、あるものごとが社会においてどういう風に認知され、理解されているか、という観点。言語や名前というのはそれを読み解くもっとも重要なカギだ。

社会投資のアプローチで使われる「名前」たちは従来の開発手法から大きく変化している。寄付ではなく投資、受益者ではなく消費者、開発実務者ではなく投資マネージャー、ニーズではなく需要、地域のリーダーではなく社会企業家、社会貢献ではなくビジネス、etc…

毎日のルーティンに登場する言葉たちも、ポートフォリオ、パイプライン、レバレッジ、Due Diligence、IRR、IPO…..と、メインストリームの投資業界と大差ない。

例えばお金をある団体の元へ流す、という同じ行為だとしても、これまでそれをチャリティと呼んでいたのに対し、社会投資ではそれを投資と呼ぶ。中身は一緒、名前が違う。何が起こるか。新しい名前を与えられた概念、もしくは事象がむくむくと変質していくのではないか、ということ。名前がつくことでその名前を表象する観念が私たちの思考の中に生まれ、その観念を体現するように私たちの行為が決定されていくのではないかと思う。

最も貧しい人に商品が届かないのは納得いかん、と言う私にその商品を作っている「社会企業家」さんは言った。「私たちは人助けをしているのではない、『ビジネス』をしているのだ。儲けを出さなきゃ死ぬんだから出来ることと出来ないことがある。」 ソーシャル「ビジネス」、という名前を得た瞬間に私たちの思考はビジネスというものにくっついた観念を引っ張り出して新しいこの試みを具象化していく。そこには法的に営利企業、という無機質で構造的な事実だけでなく、社長さんの頭のなかで構築された「営利企業というのはこういうものだ、だから私はその規範にそって行動するのが当然」という解釈と認識がある。ソーシャルビジネスという言葉は新しい試みに与えられた名前である以上に、無数の人々の解釈、再解釈、によって変化しつつ固定化されていくダイナミックな概念なのだと思う。

確立した新しい投資の実践に「社会投資」という名前が与えられたのではなく、新しい名前がついたことによってその概念や観念が私たちの思考を支配し始める。貧しい人たちを「消費者」と呼ぶこと、投資先の社会企業を「ポートフォリオ」と呼ぶこと、痛みを伴った何かの不足を「満たされていない需要」と捉えること。こういった言葉の再構成が実は言葉遊びではなく、私たちの思考と行動を決定していくのだと思う。

だとしたら、名前に用心したい。どう呼ぶか、どう呼んでしまっているか、どうして私たちはそう呼んでいるのか。そして、その名前を使うことによって私たちの思考と行動がどう変化するのか。

尊敬する叔母が「ちゃん」付けで私を叱ってくれたように、人と人の距離が離れるよりは近づくような呼び名で満たしたい。それが従来の投資ではなく社会投資、なるものに要請されていることだと思うから。
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by nanacorico0706 | 2011-02-25 11:48 | 勉強

DEAD AID と DEAD RACE


a0158818_13352481.jpgDead Aidで有名なDambisa Moyoの講演を聞きに行った。
開発援助はアフリカの経済の根本的問題を解決しないばかりか、経済成長を害している。というのがその主張。エコノミストらしく数字をちりばめながらの援助ダメダメ議論は説得力大。経済活動のインセンティブを与えないままお金を投入するだけの援助はインフレを招き、政府高官の腐敗を定着させ、民主主義の土台を壊し、途上国の債務を増やしただけで何もイイことはなかった。と。納得。
会場の皆さん、アフリカの首相や大統領の名前を何人言えますか?アフリカで貧困削減を掲げてお金をばらまくセレブの名前の方が多く知っていませんか?私はこの状況が許し難い、という言葉は切実。

が、ソリューションは?という段になって彼女が語ったのは貿易と投資の促進、とにかくマーケットを機能させよ、というもの。成長、成長、成長、そこから税収が生まれ、教育も、貧困も、保健も、援助に頼らず私たちの政府が自立して提供していけるようになる。政府は援助資金を一切断ち、市場が機能する為の最低限のインフラを整えるべし、と。

・・・うーん、結局彼女が痛烈に批判した世銀とIMFが80年代からやっていた構造調整と同じ議論。彼女はしきりに中国を引き合いに出して、如何に市場開放が今の急成長に繋がったかを強調していた。アフリカの国々も中国を見習って、市場を開放し、どんどん貿易して、外資を呼び込んで、徐々にグローバル経済の階段を上がっていくべきなのだ、と。

この、お決まりの世界観。アメリカをトップとしたGDPで構成された経済ピラミッド。もしくは1位から最下位まで経済的な豊かさに沿って積み上げられたまっすぐな階段。途上国、という言葉が示す通り、彼らはその階段を上っていく途上にある、という世界観。

あまり多く語られないのは階段を一段上るということはどこかの国が一段降りなきゃいけない、ということだと思う。グローバル経済の競争に参加するということは、もうものすごいスピードで追い上げたり追い越されたり、勝ったり負けたり、熾烈な戦いをずーっと続けることだと思う。ずーっと。つまり、この競争のプレッシャーは開発途上にある国だけが感じているのではない。70年代のアメリカが日本の製造業の生産性に負けて危機に陥ったり、今度は90年代以降の日本が中国の製造業の生産性に負けてすっかり元気無くなっちゃったり。階段を上りきった国々が余裕の面持ちで途上にある国を迎え入れる、なんて構図は存在しないのだ。

このエンドレスな競争の中で、途上国もみんなどんどん成長して豊かになりましょう、と言えるとすれば、最終的に世界経済は一体どういう姿になるんだろう。アフリカの国々がGDPでいつか日本とアメリカをやっつけて世界のトップに躍り出ればいいのか?

本当は世界はそんな単純なピラミッドなんかで成り立っちゃいない。経済大国アメリカは何十万人というホームレスを抱える貧困大国でもある。アジアで最も豊かになった日本は自殺率でも世界トップクラスだ。成長、成長、成長。それが本当に答えなのだろうか?貿易して、市場を開放して、そうすれば日本みたいになれますよ?なんて言えるのか?どちらかというと日本みたいになっちゃいますが・・・だ。

そもそも、全ての途上国が今の先進国並みの生活に追いつくには地球があと4~5つは必要とも言われている。先進国を目指せ!は、もはや現実的な開発観ではない。代替案は何か?を探っているのが今期取っているアフリカの経済開発とグローバリゼーション、の授業。グローバルではなくてリージョナル経済の可能性、Embedded Economy、と呼ばれる伝統的な経済システムと市場経済の融合、そしてSocial & Local Entrepreneurship。GDPだけでは語れない、眠っている可能性や小さな成功に光を当てていきたい。
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by nanacorico0706 | 2011-02-16 13:40 | 勉強


2年間の米国留学生活をゆるゆると綴ります・・・
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