旅の途中



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新しいおカネのまわり方


今の会社を受ける時、「社会的投資ファンドを作りたいんです。リターンを生まないやつを。」と言って面接官に「なかなか刺激的だねぇ」と半ば引かれたのを記憶している。

財団がやってきたこととはかけ離れているしまさか採用にはならないと思っていた。

8月から働き始めて約6カ月。あの時表明したやりたいこと、まだ忘れちゃいないぜ。

別にファンドをやりたいとか、Impact Investingをやりたいとか、そういうことではなく、多分おカネの持つ社会的な意味を変えていきたいのだと思う。もっと良い使われ方があるはず。

今ねちねちと妄想している形はおそらくVenture Philanthropyに近い。が、この呼び方には常々違和感があった。「それって何?」と聞き返された時に「従来のチャリティのようにおカネをあげっぱなしにするのではなく、ベンチャーキャピタルのような手法で・・・」と続くこのベンチャーキャピタルのような手法、ってところが妙に浮く。

一つは私、ベンチャーキャピタルの手法とか滔々と語れるほど知らないし。笑。

もう一つは、既存の資本主義システムの型にすっぽりはまったベンチャーキャピタルっていうアプローチを模倣することが私がやりたいことの本質ではない気がする・・・というもの。(すごい偉そうだけど・・・)

で、先日IIHOEの川北さんがさらっと会議で言っていたこの一言にすとんと落ちた。

「モノ・コトにおカネを出していてはいけないんだ。Enterpriseに出すように変えていかないと」

すごくシンプルに、そういうことだと思う。Venture Philanthropyももちろんやろうとしていることは一緒だけど、ベンチャーキャピタルの手法を使って云々、ではなく、一言で言えばつまり、社会的インパクトを生みだしていくようなEnterpriseを育てていくこと。それがNPOだろうと株式会社だろうとなんでもいい。非営利の世界も、営利の世界も変わっていく、そういうおカネのまわり方。

具現化するときにやりたいこと3つ。

「Local Capitalを活用する」
投資ファンドが東京にあって財団や企業からInitial Fundが出ていたとしても、投資先が活動する地域からもおカネを出してくれる投資家や市民ファンドなんかを巻き込みたい。そっちからのおカネで十分足りるのであればおおもとのファンドからおカネは一切出さないのが尚良い気がする(人は出しても)。

これは投資家が親方日の丸になるのを避けたいが為。投資家と投資先は居酒屋で意気投合してそれ面白いから一緒にやろうよ!という関係が理想。もしくは、出資することで直接のリターンはないけど地域がもっと良くなることで間接的に自分もハッピーになるわ、という距離感のローカルサークルにはいっている市民からの資金提供が素晴らしい。「金出してやってんだ」メンタリティも「いいからおカネだけ下さい」メンタリティも排除したい。

「おカネの出し方」
投資かグラントか、の選択ではなく、投資もグラントも。Omidyar Networkがやっているように投資先の組織形態や成長度合い、取り組んでいる領域に合わせて投資、融資、グラントと柔軟に対応していく手法がいいな。融資だってマーケットレートで貸すやり方でもいいし、NPOバンクのように利率0%があってもいい。配当の決定にコミュニティのステークホルダーの許可が必要、といった条件付きの投資なんかも面白い。

「非組織化」
組織化しないなんて無理な話だが組織化で失われるものって多いって感じている。マザーテレサは組織化と効率化をすれば愛が無くなると言って彼女の運営していた家をモデルにした全国展開を拒否したとか。効率的で洗練された組織はどうしても遊びが無くなるし異質な人や気持ち悪いぐらい新しいアイディアが侵入する余地を少なくしてしまう。プロボノとかボランティアとかインターンとかイントラプレナーとかアルバイトとか入り乱れるような安定感の無い組織にしたい。

とどれもこれもただの妄想である。が、今年も今日で終わり。ここ数年ずっと個人的なテーマである新しいおカネのまわり方について勝手な妄想で閉じるのも悪くなし。来年は妄想を少しずつでも構想に進化させていきたい。

個人的に本当にExcitingな一年でした!世界は悲しみや混乱や怒りに多く触れた一年、そしてそういう困難に強く立ち向かう人間の強さを再認識させてくれた一年。新しい年をこんなに楽しみに迎えられることの幸せを噛みしめながら、来年もよりよい社会を作ることに微力ながら力を尽くすことを誓います。
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by nanacorico0706 | 2011-12-31 17:20 | つれづれ

CSR担当になりました

12月1日からCSR企画推進チーム、というところで企業の社会貢献活動の企画提案を担当することになりました。

思えば昨年の今頃、大学院卒業後の進路を探り始めていた私。ビジネスとソーシャルどちらにも足を突っ込める立ち位置、というテーマでImpact Investingファンドやスタートアップの社会企業、国際機関のBOP担当、などの選択肢を見ながら、「CSRだけはナシだな」と思っていた。

企業の株価を上げるための「社会貢献活動」を担当するなんて絶対無理、というのがその理由。実際そんなに露骨じゃないし、本当に素晴らしい活動をしているところもたくさんある。とはいえ、やはり株主利益という神棚に足を向けられない構造の中で仕事をする息苦しさは想像するだけで自分には無理だな、という気がしていた。

一年後、まさかCSR企画推進チーム、というドンピシャな部に身を置くことになるとは思ってもみませんでした・・・(このチーム自体が10月に新設されたばかり)。が、けっこうワクワクしているし、この仕事に可能性も感じている今日この頃。

企業のCSR担当ではなく、財団というNPOの応援団みたいな立場からCSRを考え、そこに働きかけていくというのは面白いアプローチかな、と。ある社会課題を解決する為に一緒に出来ることって何でしょうか?御社のリソースを使えばこんなこと出来ちゃう気がするのですがどうでしょうか?そうやって社会課題と企業の接点を提示するところが最も重要な役割なのだ。

「ビジネスを通じて社会課題を解決する」、というのももちろん大事。それが企業とのパートナーシップの旗印でもある。だけど、個人的には「社会課題と向き合うことでビジネスが変わっていく」、というのがもっと大事、だと思っている。企業とのパートナーシップはCSR資金を活用する為だけにやるのではない。協働を通して企業側の意識や戦略やビジネスモデルに変化を起こすことに長期的な意義がある。

そういう意味では、先日財団でやったCSR Meetupでの気づきは大きかった。ワールドカフェ形式でのディスカッションを通して多く投げかけられた「誰の為のCSRか?」「誰にむけて発信するのか?」株主、社員、顧客、取引先、地域コミュニティ・・・財団で取り組むCSRの領域は最後のステークホルダー、地域コミュニティが中心。だけど、実は「社員が変わるCSR」ってすごく大事なのではないかと思った。CSR活動を通じて、社員一人一人が自分の働く会社と社会課題との接点を知るようになると、そこからじわじわ広がるインパクトは大きい。

結局社会が変わるということは制度やシステムの変革ではなく、一人ひとりの人間の世界観が変わることであると思う。

CSR Meetupでお話してくれた楽天高橋さんのメッセージ。「CSR活動はCSR担当者のものではない。社員全員のもの。」今年のCSR大賞を受賞したヤマトホールディングスさんは震災発生後すぐに東北の現場にいたドライバーさん達一人ひとりが自主判断で救援物資の運搬を始めたのだとか。

CSRという言葉や概念を知ってるかどうか、なんてどうでもいいことで、自分の仕事と社会の接点を肌感覚として分かっているか、なのだと思う。毎月頂くお給料以上の何かの為に自分は仕事をしている、という美学みたいなものが無意識の中にあるかどうかなのだと思う。

CSR担当として、一人でも多くの企業人の方に社会課題とビジネスの接点を見出して頂けるよう頑張ります。ビジネスが社会を変えていく時代から、社会課題が企業を、ビジネスを、資本主義のシステムを変えていく時代に。
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by nanacorico0706 | 2011-12-11 11:46 | おしごと

What’s Mine is Yours

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私のモノはあなたのモノ。というタイトルが示す通り、モノを個人で所有する時代から複数の人たちで共有する時代になっていますよ、というのがこの本の主題。世界では今、所有からシェアへのパラダイムシフトが起こっている。

高級車や大きな家、ブランドものを所有することが豊かさであり幸福であった時代は終わった。私たちは所有のマインドセットから脱し、リソースやモノをお互いに共有し合うことに価値を見出している、と著者は主張する。車も家もブランドバッグもシェア。Collaborative Consumptionと名付けられるその消費行動は、他と共有し、協働しあうコミュニティを形成していくのだ、と。

美しいじゃないですか。素晴らしいです。だから、その本質を探りたくて期待大で読んだのだけど、どうにも納得出来なかった。確かに「シェア」を軸とした斬新な事例は山ほど紹介されていた。Craig’s list、Zipcar、Sharable、Couch Surfingなどすごく面白いモデルだと思う。だけど、こういったサービスやシステムを受け入れ始めた消費者の心理の変化に関する考察はあまりにも的外れな印象。著者の分析が正しいとすると、結論、パラダイムシフトなんて起きてない。

映画版Sex and the Cityのこんなシーンが引用されている。
アシスタントを探していた主人公のキャリーのもとに面接にやってきたルイーズ。気に入って採用を決めたキャリーがルイーズに最後の質問。「無職のあなたがなぜヴィトンのバッグなんて持ってるの?」と。ファッション狂のキャリーらしいちょっといたずらっぽい質問だ。ルイーズは恥ずかしがる素振りも無く、「これはレンタルよ」と。Bag Borrow or Stealというブランドもののバッグをレンタル出来るアメリカで人気のサイトで借りたものだ。「なんで知らなかったのかしら?!」とキャリーの驚き&感心で場面は閉じる。



著者は「ルイーズが借り物のヴィトンを照れも隠しもしなかったように、人々は今、シェアすることを誇りに思っているのだ」と言う。

本当にそうだろうか?

あの映画を見た人なら記憶しているかも。映画の終盤、アシスタントを卒業するルイーズに対して、精神的な支えになってくれたお礼にキャリーがプレゼントするもの・・・ウン十万のヴィトンのバッグである。箱を開けて「自分だけの」ヴィトンを見つけたルイーズは発狂寸前の興奮で歓声を上げる。彼女はシェアする行為に価値を見出してレンタルをしていたのではない。本当は所有したかったのだ。自分だけのヴィトンのバッグが欲しかったのだ。どうしても手が出ないそのバッグを仕方なく借りることでやり過ごしていたに過ぎない。ルイーズに限って言えば所有からシェアへのマインドシフトなんて起こってはいない。所有したくても出来ないから疑似的所有の為にシェアをしているに過ぎない。

この矛盾を著者はあっさりと認めてしまっている。「A key to a product service system’s success is its ability to satisfy our deep-seated need to feel like an owner for at least the time the product is in our care.」所有したいという人間の根源的欲求を満足させるような仕組みを作ることがコラボレーティブ消費の成功のカギだと。つまり、著者の言うシェアリングエコノミーとは所有せずに所有する満足感を得る為の仕組というわけ??所有からシェアへ、システムは移行しているものの、その仕組に参加する消費者の意識や価値観はシフトしていない。消費者は引続き所有したいのだ。

この本が描くシェアリングエコノミーのロジックは企業の所有からリースへのトレンドと同じレベルにしか見えない。ここ10年ぐらいで急速に進んでいる企業による資産圧縮。従業員を派遣に切り替えたり、工場を売却したり、自社ビル保有しないで借りる、所有しなくて済むものは所有しない。そのほうが投資効率がいいから。

所有することへの拘りが薄れているのは確かだろう。だがそれは、私たちがより責任ある、協調的な行動にコミットし始めているのではなく、単に経済的な意味でスマートなっているだけなのか?

いや、実際にはそうではない、と信じたい。コレクティブな何かを模索する現代人の心理ってもっと深いところにあるはず。そこがこの本では全く見えてこなかった。

著者は言う。消費者を変えるのではなく、システムをよりサステナブルなものに変えれば良いのだと。個人の利益を追求する消費者が今までもサステナブルでコレクティブなことをしていると気づきさえしないようなシステムに。消費者の意識を変えることなく消費行動を変えさせることがミソなのだ、と。サステナブルな消費が実現さえすれば消費者のマインドセットを変える必要はない、と。

???

社会の変化というのは個人の意識の変化→システムの変化というベクトルと、システムの変化→個人の意識の変化という双方向のインタラクションで有機的に起こっていくものだと思う。著者が想定するようなシステムの中で無意識的に条件反射的に行動するような消費者像にはかなり違和感。

そんな薄っぺらいものではないはずだ。シェアハウスや時間バンク、exchangeやクラウドファンディングのもたらす社会的インパクトの調査とかやったらすごく面白いのではないか。参加した人たちの意識や価値観がどう変化していったか、全く変化しないのか。これだけたくさんの事例をさらって膨大なインタビューをしているのにもったいないな・・・。

シェアリングエコノミー、所有と独占の常識をひっくり返す新たな経済やマーケットの仕組が必要とされていることは確かだと思う。システムの変革も人の意識の変化も同時並行的に起こっていくはずだ。パラダイムシフト、これから。
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by nanacorico0706 | 2011-12-04 12:58 | 読書


2年間の米国留学生活をゆるゆると綴ります・・・
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