2月27日、28日とハーバード大学主催の
Social Enterprise Conferenceに参加。その後このカンファレンスに参加する為に日本から来ていたツアーの方々と合流してNYでも色々と先進的な企業やNGOを訪ねる。
たっくさん刺激を受けて本当に収穫大のイベントでした。
マーケットベースのアプローチは最も貧しい人には届かない。とすれば、BOPビジネスは本来政府が提供するべきと考えられてきたマーケット外での機能を軽視し、ますます途上国の政府を弱体化させるのではないか。BOP万能論、マーケット至上主義は危険、という問題意識を持っていて、ここんところを色々な人にぶつけてみたい、と鼻息荒く参戦。
が、いや皆さん潔くもう気持ち良いぐらいに「ビジネスは本当に貧しい人には届きません。政府に頑張ってもらわないとダメなんです」と仰っていました。はい。そう思います。BOPビジネス万歳!みたいな人は皆無。大変失礼を致しました。鼻息沈着。
*マイクロファイナンス機関への投資会社
Developing World Marketsの幹部の方
「マイクロファイナンスはBOPの最底辺の人々には届きません」と断言。経済活動に参加する以前の基本的ニーズが満たされていない人にとってはマイクロファイナンスは貧困削減のツールとならない。基本的なインフラや公共サービスの提供においては政府の機能は引続きとても重要。
*革新的な技術でBOP層への水供給をしている
Water Health InternationalのPresident
先進国に見られるような大規模な水供給インフラの整備は今の途上国ではほぼ不可能に近い。理由は1、そもそも国民全体に行きわたるだけの水資源の確保が非常に難しくなっている。2、政府にお金が無い。となるとコミュニティごとに小規模な浄水施設を作る同社のやり方が今後期待されるシステムだと。
現状、住人の多いコミュニティでは政府や国際機関の援助資金なしに有料モデルできちんと事業として成り立っている(利益が出ている)とのこと。一方で小さなコミュニティでは規模の経済が働かないため、外部からの援助資金をミックスしている。「Pure privateもPure publicも存在しない。ミックスが重要」と。
ビジネスでは水が供給出来ない農村部の小さなコミュニティに関しては政府に協力も呼び掛けているそう。また、水供給は公共性の高いビジネスなので水の安全性など、積極的に規制すべき、とも政府に働きかけているとのこと。あっぱれ。
*病院の不足しているインド郊外にクリニックを広めている
Vaatsalyaの創設者
人口の70%が農村地域に住むにも拘わらず病院の80%は都市部に集中しているというギャップを埋めるために都市部の4分の一の価格で医療を提供する営利のクリニック。現状カバー出来ている顧客は一日3~7ドル程度の収入で暮らす人々。一日1~2ドルと言われる貧困ライン以下の人たちはまだ手が届かない価格帯ということ。ビジネスとして持続させるためには現状これがコストぎりぎりの価格。BOP層にサービスを提供するのは今のところ非常に難しい、と。自分たちに全て出来るとは考えていない、無料のクリニックも有料のクリニックも両方必要、と。
その他あちこちのパネルやセッションで政府めちゃくちゃ重要、と力説する社会企業家やBOPビジネス推進者。先日はAcumen Fundインターンの電話インタビューでも「質問ある?」と言われて「この価格だとBOP層は払えないですよね?」と聞くと「その通り。政府に働きかけて色々工夫しようとしてます」と。
頑張れ政府!使い古されたPublic Private Partnershipを超えた新しい協働が必要とされているのだと思う。BOPビジネスが政府を弱体化させるのではなく、政府を巻き込み、働きかけ、補完しあう方向性がある。
繰り返しになっちゃうけどprivate/publicという区分自体がもう有効じゃないのかもしれない。社会的利益の極大化に目標を定めると、そもそも誰がやるかは関係ない。社会的利益が最大になるやり方でそれを出来る全てのアクターが参加すべし、というのが共通認識になっていく。
もちろんこれは理想形。そして今回の参加企業はこの分野で最も先進的な取り組みをしている会社だろうから、現実そんなに美しくはないだろう。上場多国籍企業、みたいな大会社はいなかったし。「社会的利益」を定義づけるのは誰か?という問題もある。利益を確保しないと死んじゃうというビジネスの厳しさは時に企業の視野を狭めるもの。でもだからこそ今回お会いした企業の経営者の方々、すごいなぁ。
少し視界が開けてきた1週間でした。